陰のある女が好きなのです。
空虚さがにじみ出ている女が、好き。堕ちるところまで堕ちたような、女。
近寄り難いのに、近づくのは止したほうが良いのに、近づきたくなる女。
そんな女こそ、高学歴や育ちの良い男を落とす、もとい堕とす。
私は、陰のある女が出てくる恋愛小説を よく読むなと思いました。陰のある女が好きだし、憧れてもいるのです。
陰のある女ってどうやったらなれるのだろうね。
高学歴や育ちの良い男を落とすのに、この二冊の本を参考にしていただけたら幸いです。
私の男 / 桜庭一樹
美郎が花を意識するところ。陰が出来る生き方をしているからこそ出来る視線の合わせかた。
腐野さんはなぜだか、哀れむように目をほそめて僕を見上げていたのだった。盗みをみつかった瞬間のような羞恥がからだを駆け抜けた。
この人、どうしてそんな目で僕を見るんだ。
僕が幸福ではないことを、とつぜん、なんのヒントもないのに見抜かれたような気がした。僕はうろたえて、腐野さんから目をそらした。
花の考え。
結婚するのにもどこか投げやりだった。美郎の、安定した生き方がうらやましかった。あやかりたいという眩しい気持ちと、平凡であたたかな育ち方をした彼の、幸福をあなどる思いの両方があった。
この人となら、と、結婚を決めたときわたしは考えたのだった。
こういう男の人だったら、絶望的に絡みあうのではなくて、息もできない重苦しさでもなくて、ぜんぜんちがう生き方ができるかもしれない。生まれ直せるかもしれない。不吉さの欠片もない、彼の若さそのものに安堵する気持ちもあった。わたしは、できるならまともな人間に生まれ変わりたかった。ゆっくりと年老いて、すこしずつだめになっていくのではなく、ちゃんと家庭を築き、子供を産んで育てて、未来をはぐくむような、つまりは平凡で前向きな生き方に、変えたかった。そうすることで、手ひどい過去までも、ずるく塗りかえてしまいたかった。そうやって自分を生き延びさせようとしていたのだけれど、いまこうして、こんな明るい場所にじっと座っていると、わたしのわたしそのものである部分—見たことも触ったこともない、魂の部分が、ゆったりと死んで、震えながら急速に腐っていくようにも感じられた。
6月14日(土)に映画が公開されます!絶対に観に行きます。
ほかならぬ人へ / 白石一文
「前にも言ったけど、うちはお父ちゃんがあんなだったから、私は、ちゃんとお付き合いするなら絶対に浮気をしない人って決めてたの。ああいうお店で働いていたら、男の人の生態ってほんとによく分かるの。明生ちゃんを一目見たとき、『あっ、見っけ』ってぴんと来たの」
かけがえのない人へ
「とにかく私としては一度結婚というキャリアを消化しておきたいの。失敗したところで結婚という経験をすることができた、というのが大きいのよ。自分でもいやになるような、このわけの分からない結婚願望のようなものを私はこの身体のなかから早く追い払いたいの」
「それじゃ、まるで悪魔払いだな
「あんたもたまにはいいこと言うじゃない。そうなのよ。私たち女にとって結婚っていうのは、言ってみれば悪魔の呪いみたいなもんよ」
今回は陰のある女の部分を抜粋したけれど、違う箇所のほうがすごく惹かれた。
ベストな相手が見つかったときは、この人に違いないって明らかな証拠があるらしいんですけれど、どうなんでしょう。
高学歴や育ちの良い男は、肩書きをみてくる女を徹底的に避けるか、肩書きにたよらない魅力を持つか。
特別な目でみられた時に失望するのではなく、受け止め方をかえるべきですよ。
あとは、互いに心を開き合うほどの深い関係になることが大事ねっ。
本を読まない女よりは私に陰があったら良いなと思いました。